演出:蜷川幸雄
出演:藤原竜也、中嶋朋子、北村有起哉、吉田鋼太郎、香寿たつき、横田栄司、田村真、前川遙子、寺泉憲、瑳川哲朗ほか
シアター・ドラマシティにて観劇
ギリシャ悲劇です。映像では『メディア』や『オイディプス王』などを観た事がありましたが、生の舞台でギリシャ悲劇は初めてです。
まず驚いたのは、舞台上に降る雨。もう大量に降ります。ザーって。
舞台はやや斜めになっていて、雨が舞台前方に流れ落ちます。
音もすごいし、水の匂いもします。
本当に、雨の中で演技しているような感じ。
中嶋朋子さんが、細い身体で雨の音に負けないように台詞を叫ぶ(声が少し枯れているほど)。
ところどころ、どうしても台詞が聞き取れないのが残念。
それでも、独特な雰囲気・・・という意味では、今まで見たことのないものでした。
流れる水っていうのはあったけど・・・ずっと雨が降り続けるなんて。
いったいどうやってるんでしょう?
こんな演出は、蜷川幸雄じゃないとできないでしょうね。
その独特な雰囲気が非日常なギリシャ悲劇の世界に入りやすくしているように思えました。
さすがに神の声が、おもいっきりスピーカーから流れてくると違和感ありましたけど…(^^;
いっそ客席の一番後ろから役者さんが生声で、の方がよかったのになぁなんて。
蜷川幸雄の舞台でマイクを使ったのを観たことがないのでスピーカーから聞こえることで違和感を感じてしまい、現実に引き戻されてしまったのです。
言ってる内容も当然神アポロンの台詞だし、非現実的なので。
まぁ、ギリシャ悲劇のお約束なので神様オチはしょうがないんですけどね。
ギリシャ悲劇お約束のコロス(群集)は、全員女性。
コロスに関しては、いいなと思うところと、うーんってところと。
いいなと思ったのは、嘆くシーン。まるで運命をどうすることもできない天使たちがただ嘆くしかないって感じで、悲劇がさらに強調されていました。
どうかなって思ったとこは、手をつないでまわるところ。
どうしても、あー、ソコ詰まって来ちゃった?ソコ開きすぎ?みたいに気になっちゃってちょっぴり現実に戻ってしまいました。残念。
手をつないでいなければ、気にならなかったのかもなぁ。
惨劇は他の役者が代弁するなど、様式的なところがあるのでどうしても主役の人以外の台詞も長くなってしまいます。
実は今回もう1回見に行く予定だったのが急遽行けなくなってしまい、友達にこの公演のチケットを譲ったのですが、このあたり知らないと、「なんでこんな重要なシーンが第三者の説明だけなんだよ!」ってなっちゃいそうですね。(^^;
いろいろ書きましたが、やっぱりあの全体的に醸し出される独特な雰囲気・世界観は蜷川幸雄ならではだと思います。
あ!最後の演出が。
客席天井から、降ってきたんです。A4サイズの紙がいっぱい。積もるほど。
プリントされているのは、アメリカ、イスラエル、パレスチナ自治区、レバノンの国旗と国歌。
そう。戦争や内戦をしているところ。
ギリシャ悲劇は、紀元前のお話しです。そりゃもうエライ昔のお話しです。
憎しみの連鎖・殺し合い。
・・・なにやってんでしょね、ほんと人間は。もう21世紀だというのに変わりません。